かすかな震えが止まらない。
「……腹減り過ぎると気持ち悪いとかいうじゃん?」
首筋から背中にもたれかかる尋常じゃない脱力感を抱えながら僕は言う。
「……肝要なのは、『空っぽを何で埋めるか』、ではなく『空っぽを何で包むか』それがすべてだ。」
それは嫁にでも誰にでもなく、僕自身に言った言葉だったのだろう。
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こんにちは。MAmeeともうします。
あれは先日の事です。
そろそろファミリーカーを我が家に一台!と意気込んで中古のミニバンを探し歩いている日の事。
当初、身内の知人がいて顔が利く「日〇」のディーラーに行く予定だったのですが。
「そこらへんにも意外な掘り出し物があるんじゃないか?」
などと、ドラクエの建物の間の狭い道を調べるボタン連打しながら一歩ずつ進む感覚の嫁の意見を採用し道中色々な店舗を見てみようということになりました。
今思えば、融通のきくところで商談するのが一番金銭的にも時間的にも最適だったのでしょう。
ですが、
(子供の送迎とかもこれから増えてくるだろうし、嫁の意見を尊重してあげよう。)
という我ながらいい旦那風なことを考え自己陶酔し、自己満足の絶頂をつつあったその時の僕は、脳のシナプス的なものが多数死滅していて現実的な効率を考える余裕がなかったんだ。
1店舗に1時間以上ずつ滞在し、行く場所場所で子供にお菓子をくれたこともありなんとなくお昼ご飯を食べ損ねていました。
(店内に入り席に座ると商談話が面倒なので中に入るのはことわっていた。)
そんなこんなで時刻は16:00に差し掛かり、僕はその日起きてから8時間程何も口にしていない状態でした。
目的がある時、寄り道するのがキライな僕ですが。
(さすがにお腹すいたからもうどこかに寄って何か食べたい)
そう思いながら5店舗目に中古車を探しに着いたところです。
そこで我が家の条件に適した車を発見し嫁は大層気に入った様子でした。ですが、ボディーカラーのみは理想としている白ではなく黒で、
「同じ条件で白は無いのか?」
と、嫁が尋ねるとどううやら50キロ近く離れたところに出張店みたいなものがあり、そこに同条件の白が置いてあるそうだ。
現時刻は17:00程。その店舗の営業時間は18:00。
今からいけばギリギリ到着するが寄り道する時間もない。
嫌な予感がしつつ僕は嫁に尋ねてみた。
「早めに状態を確認したいから今日行っちゃおう!」
案の定行くことになり、普段あまり使わない高速道路をかっ飛ばした。
そして、楽しげなサービスエリアの雰囲気を横目にスマートにインターし不満げな息子に謝りつつ一般道に降り農道をかっ飛ばした。
時刻は17:30。到着した。
じっくり車を確認する時間もあるだろう。この時点で何も口にしていない状態が10時間に到達していた。
もうとっくに胃の中は空っぽだ。
空腹のけだるさを隠しもせずにお目当ての車をよく観察していた。
10分ぐらい嫁とそうしていると、店内でお話を伺うといわれショールームの中へと案内された。
この時点で僕はもう喉が渇き過ぎて何でもいいから腹に入れたかった。
そして席に着くと当然飲み物を聞かれ、手作りの簡素なメニューを見ていると、
「当店のコーヒー豆はスターバックスコーヒーの豆を使用しております」
この時の僕の頭では、
「え、店で頼むと500円くらいするちまっこいカップに入っているあの富裕層の汁?あれがタダで飲めるの?」
と、下世話な考えをしていた。
いままで嫁に付き合って「なんたらフラペチーノ」とかしか試したことがなかったので、「スタバのコーヒー」というものへの好奇心も存分にあり、気づけばアイスコーヒーを頼んでいた。
自分の胃袋がどんな状態かも忘れて。
昔から、僕はコーヒーを普通に飲めてた。
パチンコなどを嗜んでいた時期は、朝一から一日中タバコとコーヒーのみで過ごすこともざらだった。
そんな過去も相まって、僕は忘れていたのだろう。
カフェインは刺激物であることを。
そして確実に年々自覚していく自分の胃袋の衰えを。
飲み物を飲み終えひとしきり商談を済ませた結果。
「やっぱ当初の予定通りの店で買おう!」
と振出しに戻ることになった。
翌日仕切りなおそうということでその後、下道を通り地元へと舞い戻ってスーパーで買い出しをして帰ろうということになった。
その時になって、いや。帰りの運転中から自分の体調の変化に気づいていた。
ノドに感じる違和感、体全体の脱力感、特に首スジ・肩から背中にかけて。そして手足の微弱な震え。
この感覚には身に覚えがあった。
アレルギー。
唯一自覚している甲殻類・海産物のアレルギー。
それを無理やり食べた時の反応と同じ感覚だ。
その時点で、「空きっ腹にカフェイン」が原因だと悟った。
まだ隠せる程度の絶妙な体調の悪さの中、スーパーを買い物していると、ドリンクの試飲をやっているのが目についた。
(ちょうど胃に何か入れてごまかしたかったところ!ありがたい!)
即座に飛びつきぐぃっと流し込み、
(ん、ほのかなガラナの風味。なんかエナジードリンクっぽいな?)
と、すぐ横の棚を見てみると、
「ぇ~ナジィーーぃぃ~……」
カフェインの神様は、カフェ神はなぜこのような試練を与えたもうたのか。
そしてエナジードリンクが苦手な嫁は一口付けただけで、
「無理ぽ。飲めないから飲んじゃって。」
何なんだ畜生。
更なる追いカフェインに胃の中がさらに荒れていくのと、体を包む不快な倦怠感が増していくのを感じながら家路へと付いた。
その後いろいろな方法で症状の改善を計った。
大好きなハイボールを流し込んでみたり。
油分で胃袋をコーティングするイメージでチーズとサラミを食べたり。
普通に水を飲んでみたり。
親戚からもらった群馬温泉郷の土産の、謎の燻製黄金ゆで卵食べてみたりしてみた。
けどそのどれもが、コールタールのごとく胃袋の内壁にへばりつきしみ込んだカフェイン感をぬぐう事が出来ず。
むしろコールタールなどとイメージ力が働いたせいか気持ち悪さが微増していった。
嫁も心配そうに、
「大丈夫?そんなに変な感じなの?」
かすかな震えが止まらない。
「……腹減り過ぎると気持ち悪いとかいうじゃん?」
首筋から背中にもたれかかる尋常じゃない脱力感を抱えながら僕は言う。
「……肝要なのは、『空っぽを何で埋めるか』、ではなく『空っぽを何で包むか』それがすべてだ。」
それは嫁にでも誰にでもなく、僕自身に言った言葉だったのだろう。
それ以来僕はコーヒーが飲めなくなってしまった。
アレルギーといって差し支えないだろう。
あるトラウマが苦手意識となり、アレルギーと呼ばれるまで昇華する。
人体の不思議を垣間見ると同時に、
「飲食と自分のコンディションのマッチングをよく考えるようにしよう」
と考えさせられる出来事でした。
皆さんもノドを通るものはどうかお気を付けを。
あ、あとコカ・コーラエナジーはまぁまぁおいしかったです。
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